昔のハナシ

小学生の頃、学校の門を出て、学校と民家に挟まれた路地を抜けたところに、大きな雑種の犬を飼っている家があった。
私が通りかかると、その犬は門扉に前足を引っかけて、私の目線と同じ高さになって、私の手をなめ回してうれしそうにしていた。私もその犬が大好きで、いつも飽きるまで頭をなでたり手をなめて貰ったりしていた。
先生は「あの犬はよくかみつくし吠えるから、近づいちゃだめだよ」なんて言っていたが、私にはそんな気配すら見せなかった。
ある日のこと、ある生徒がその犬に噛まれて大けがをしたというハナシを聞いた。誰が噛まれたのかと詮索してみたら、どうやらいじめをやっていた子だったらしい。
その子は、帰り道で犬や猫を見ると追いかけ回していじめていたらしい。
大けがをさせた犬は、結局殺処分されてしまったそうだ。
私にはあんなに優しい目をして、いつもうれしそうにしていたのに。
それから、大きくなった今でも、私は犬に噛まれたことがない。
飼い主にもなつかないと言われる犬でも、私が近づくと手や顔をなめてきたり、じーっと私の顔をみつめていたりする。
きっと、彼らには、私が危害を加えようとしているんじゃないということが、ちゃんとわかるんだろうなと思う。
犬にはわかってもらえるのに、何故人間にはそれがわからないんだろうねと思う。
ここのところのとある界隈を見ていて、そんなことをふと思ったので、書き殴ってみた。